『造形あそび』ってなんだろう?

造形あそびって、教育?、あそび?、保育?

こどもにとって造形あそびってどんな意味があるのでしょう?

そんな疑問に、さえこ先生がお答えします。

あそびと学び

ママさん

最近『造形教室』や『造形あそび』ってよく聞くけど、絵の具や粘土をぐちゃぐちゃしてるだけで、何の役に立つの?

さえこ

造形あそびは、こどもの成長と深く関係しています。
こどもの精神的な成長を助けたり、創造性を高めたりする
効果があることが知られています。

ママさん

うちの子は一人でもあそべるから、わざわざ造形教室に行かなくてもいいと思うなぁ。

さえこ

一人であそぶことも大切ですが、造形教室では家庭ではやりにくいあそびや他のこどもたちと関わるあそびを実施します。

ママさん

なんで他のこどもと関わることが大切なの

さえこ

こどもが接する人は、家族、親戚、保育士、そして友だちへと広がっていきます。
家族や保育士以外の人と接することで、自分と他の人の違いや共通点を発見し、少しずつ社会性を身に付けていきます。

ママさん

教室って聞くとなんだか堅苦しい気がするな~

さえこ

造形あそびでは、こどもを自由にあそばせるわけではなく、年齢に応じた道具や素材、そしてあそび方を専門家が指導します。

確かに専門家は、あそびに一定のルールを設けますが、このルールは、こども束縛するものではなく、あそびを安全に、より楽しいものにしてくれるものです。

もちろん、ガチガチのルールではなく、臨機応変なルールなので安心してください!

ママさん

あそびが成長に必要なことはわかったけど、絵の具をぐちゃぐちゃすることが、本当に役に立つの?

さえこ

こどもは、手に触れることで、モノの硬さやモロさ、重さや柔軟性など、素材の特性を学んでいきます。
体験が少ないこどもにとって、触れたことがない、やったことがない体験は、他の体験と結びついて知識を形成していきます。
手や指、肌の触覚を使ったあそびは、体験を通じてさらに他の知識の形成も早めてくれますよ。

ママさん

変なあそびを覚えると、家の中でイタズラしないか心配なんだけど・・・。

さえこ

イタズラはこどもの好奇心の表れであり、成長の証しです。
やっていいことと悪いことは、あそび以外でも存在します。
もしも、イタズラを発見したら『やってみたかったんだね。今度は、一緒にやろうね。』と好奇心を認めて声をかけてください。

ママさん

芸術家になってほしいわけじゃないから、わざわざ教室に行かせようとは思わないな〜

さえこ

造形教室は美術教室と違い、上手につくることが目的ではありません。
造形あそびは、知的好奇心や創造性など、あらゆる学びの基礎となる感性を醸成してくれます。

あそびと成長

ママさん

そもそもあそびって何?

さえこ

児童心理学者の山田敏は、あそびを以下のように定義しています。
①活動が本人にとって楽しいこと
②その活動自体が目的であって他に目的がないこと
③外部から強制されている、という感覚がないこと

つまり、本人が主体的に楽しく何かをやっていれば、それはあそびと言えそうです。

ママさん

造形教室に行かせるって、強制したことにならない?

さえこ

造形教室では何かをこどもに強制することはありません。
こどもが好奇心を抱くような、道具や素材、あそび方を紹介してあそびのきっかけを提供します。

ママさん

それなら、家でもできそう。
わざわざ教室に行かせる必要ある?

さえこ

教室の指導者は、様々な研究を行った上で、あそびの種類や道具、進め方を実践しています。

例えば、まっさらな紙とクレヨンを用意するだけでは、こどもは何を描けばいいのか戸惑いますが、紙に穴をひとつ空けておくだけで、こどもは想像力を働かせ、そこから自分なりのあそびを発見することがあります。

造形教室でのあそび体験は、こどもの成長を助けてくれるでしょう。

ママさん

ほんとに?

さえこ

文部科学省は、あそびの重要性について以下のように言っています。

文部科学省の人

「幼児にとって体を動かして遊ぶ機会が減少することは、その後の児童期、青年期への運動やスポーツに親しむ資質や能力の育成の阻害に止まらず、意欲や気力の減弱、対人関係などコミュニケーションをうまく構築できないなど、子どもの心の発達にも重大な影響を及ぼすことにもなりかねない」
ー文部科学省 「幼児期運動指針」よりー

さえこ

大人から見れば無意味に思われる行動であっても、それが、あそびの要件を満たすならば、こどもの成長に欠くことのできない重要な行動なんですよ。

ママさん

そうか!”こどものあそび””大人の遊び”はまったく意味が違うのか~!

こどもと創造性

ママさん

創造性が大事ってよく言うけど、大きくなれば自然に身につくものじゃないの?

さえこ

創造性は、『才能』や『ひらめき』、『個性』などと混同されてよくわからないですね。

カナダの教育哲学者、シャロン・ベイリン(Sharon Ballin 1948-)は、創造性は、伝統や過去の体験、技術や知識と切り離すことができないと言います。
つまり、人の創造性は、ある日突然発揮されるものではなく、それまでの体験の上に成り立っています。

ママさん

家庭よりも多くの体験の機会を与えてくれる場所が造形教室ってことなのね!

保育園と教育

ママさん

保育園って、保育する場所なんだから、教育には早すぎるんじゃない?

さえこ

保育所の主たる目的は保育ですが、厚生労働省が発行する「保育所保育指針」で「幼児教育を行う施設として共有すべき事項」が示されました。

厚生労働省の人

幼児教育を行う施設として共有すべき事項
<育みたい資質・能力>
①豊かな体験を通じて、感じたり、気付いたり、分かったり、できるようになったりする「知識及び技能の基礎
② 気付いたことや、できるようになったことなどを使い、考えたり、試したり、工夫したり、表現したりする「思考力、判断力、表現力等の基礎
③ 心情、意欲、態度が育つ中で、よりよい生活を営もうとする「学びに向かう力、人間性等
ー厚生労働省「保育所保育指針」 平成30年版 第1章 総則第4項よりー

さえこ

このように、保育園で行われる教育は、学校教育とは違い、何かを「覚えたり」、「できるようになる」ことが目的ではありません。

より多くの体験から、成長にあわせて自己と外界をつないでいく大切な役割があるんですよ。

ママさん

なるほど!
そういうことね。
今度、造形あそびワークショップに参加してみますね!